大人の着こなしは“紺ジャケ”より“紺ブレ”でメイク
大人のジャケットスタイルの基本は“紺ジャケ”ですが、今年はよりトラディショナルな気分の“紺ブレ”がおすすめです。ジャケットとブレザーの違いも含め解説しましょう。今着たいのは、アメトラを気取れる“紺ブレ”です
オンはもちろんオフのシーンでも、テーラード型のジャケットは大人着こなしの基本ですが、スーツの上着だけ単品使いするようなベーシックな“紺ジャケ”では当たり前過ぎかもしれません。今年新調するなら、紺色のブレザー“紺ブレ”を選んでみましょう。あくまできれいめながら肩肘を張らない知的な印象を作る紺ブレなら、見え方も気分もがらりと変わります。
オンからオフまで、大人が選ぶブレザーの条件
19世紀中盤、英国海軍の有する艦「ブレザー号」の制服として採用されたダブルブレストのジャケットがブレザーの起源だといわれています。その後19世紀後半に、カレッジアイテムの象徴としてシングルブレストが登場。さらにアメリカに渡るなかでフラップ付きポケットやセンターベントが採用されるなど、時代を追うごとに軍の実用品から都会に馴染む紳士服へと改良が施されてきました。そんな歴史あるアイテムゆえにバリエーションも多種多様で、ブランドによって解釈の異なるアイテムが乱立しています。そのなかからクラシックになりすぎず、現在の着こなしに似合う1着を探すことが大切です。その基準となるポイントをご説明しましょう。
条件1
まずは何といってもメタルボタンを選ぶ
紺ブレにはメタルボタンが必須です。ドーム型で刻印入りのものやフラットな足付きのものなどがありますが、とくに刻印入りのものはヴィンテージ感が強く格式高い着こなしを構築したい人におすすめです。また、写真のようなカジュアルなアイテムに合わせてメタルボタンのアクセントを引き立てるのもアリ。
条件2
ポケットはパッチ式のものを選びます
スーツのジャケットのポケットはフラップ付きの切りポケット(袋状の部分が内側にあるポケット)ですが、ブレザーはパッチ式のモノが主流です。切りポケットでフラップがないものが最もフォーマルなスタイルで、次がフラップ付き、そしてパッチポケットはカジュアルなジャケット用と覚えておきましょう。胸ポケットまでパッチ式の3パッチなら、よりアメリカ式のトラディショナルなブレザーといえます。
条件3
ワッペンなどのない、すっきりしたデザインのものを選びましょう
学校やチームのユニフォームとして定着した紺ブレは、パッチ式の胸ポケットにワッペン(エンブレム)がついているモノを良く見かけます。ですが、街中でファッションとして着るのに所属を表すワッペンは不要です。スクールプレップな着こなしよりシックなトラッドスタイルが隆盛している現状を鑑みても、デザインはシンプルさが肝心です。
知っておいて損はなし。上級者に見る紺ブレの着こなし方
大人が選ぶべき紺ブレの条件がわかったら、次いで理解すべきはその着こなし方。ビジネスの場からきれいめなカジュアルスタイルまで幅広く使えるアイテムですが、もちろんTPOに沿ったスタイリングの作法があります。達人たちの着用例を参考にしつつ、そのテクニックを探ります。
着こなし1
会社に着ていくならグレースラックスを合わせましょう
紺ブレとグレーのスラックスは最強の組み合わせ。タイドアップすれば、フォーマルなシーンでも通用します。なお、このとき白無地のシャツにソリッドカラーのタイをするのが紺ブレの基本です。レジメンタルタイだとそれこそユニフォームみたいになってしまいますし、プリントタイのような華やかな色柄は用いないのが紺ブレ着こなしのマナーとなっています。あまり遊んだ着こなしにしないのが、紺ブレをドレッシーに着るコツです。
着こなし2
ギンガムチェックのシャツとの相性は抜群です
紺ブレはアイビーやアメトラでも人気の高かったアイテムですので、プレッピー風味のギンガムチェックシャツとの相性が抜群です。こちらはインにダブルのジレを合わせたコーデ。紺からブルーのグラデーションで色数を絞りながら、チーフやタイでもさりげない色柄を載せることでおしゃれな空気に仕上げています。
着こなし3
白パンを合わせれば、大人スポーティなコーデに
紺ブレ&白パンの組み合わせは、上下のコントラストが効果的に働いて存在感がアップするコーデです。白パンはクリース入りのドレスパンツではなく、細身の5ポケットにしてカジュアル味を強調してもブレザーが上品に格上げしてくれるので安心です。ここではボタンダウンシャツにクルーネックのニット、足元はレースアップのUチップと、あえて王道を外したコーデを展開することで嫌味のない個性を主張しています。
着こなし4
ボーダーカットソーでマリンなブレザースタイルを
紺ブレ×マリンボーダーの組み合わせも王道のカジュアルスタイルです。初夏の大人カジュアルはワークよりマリンテイストが似合います。ボーダーは白に紺または黒でクリーンなコントラストを描くのがポイントで、このボーダーの色が浅いとキリッと締まらないのでご注意を。
ハズレなし。人気ブランドの紺ブレ7選
紺ブレはアメトラブランドの定番こそが間違いないとされていますが、最近ではスポーティできれいめな紺色のカジュアルジャケットにメタルボタンの組みわせでいろいろなブランドからリリースされています。定番からモダンな1着まで、幅広いテイストの紺ブレを以下にご紹介しましょう。
アイテム1
『ジェイプレス』
アメトラ定番ブランドの紺ブレは、フロントダーツをとらないサック型シルエットが本物の風格を漂わせます。ペピンメリノと英国調のウールをブレンドしたトロピカルウール生地は、ドレッシーな印象でオンのスタイルにも通用するもの。腰ポケットはパッチ&フラップ式でこれまたトラッドなムードを高めてくれます。
アイテム2
『ブルックスブラザーズ』×『アーバンリサーチ』
ニューヨーク発祥の老舗ブランド『ブルックスブラザーズ』に『アーバンリサーチ』が別注。刻印入り金ボタンや3パッチ式のポケットを採用したトラッドなデザインですが、高いゴージラインに細めのラペルといった現代的な要素もプラス。ブランドのシンボルマークが配されたボルドーの裏地で高級感を高めている点も見逃せません。
アイテム3
『チルコロ1901』
伸縮性の高いジャージー素材を使ってテーラード型のジャケットを仕立てました。色は濃紺に近しい、インディゴカラーというのも遊びが効いていてユニークですね。着心地もルックスもオーセンティックな紺ブレとはまったく違いますが、最旬の紺ブレはここまで進化しているんです。
アイテム4
『タリアトーレ』
今イタリアのブランドの中で最も勢いのある『タリアトーレ』に、『ビームス』が別注したダブルの紺ブレ。ピークドラペルはワイドめで、英国式のチェンジポケットもあしらわたクラシックな印象の1着です。ウェストはかなり絞られていますので、着てみると真面目そうな紺ブレながら色気のあるスタイルを作れるはずです。
アイテム5
『マッキントッシュフィロソフィー』
英国老舗ブランドのセカンドラインである『マッキントッシュフィロソフィー』からは、ポリエステル100%の紺ブレをピックアップ。ストレッチ性や吸水速乾性に優れた機能素材でありながら、本格志向の見た目がキープされている点はさすがの一言。シワになりにくいため出張などの持ち運び時にも重宝します。
アイテム6
『ブルックリンオーバーオール』
ワークウェアブランドの『ブルックリンオーバーオール』からも紺ブレが登場。ハイゲージのジャージー素材から生まれる、独特のヴィンテージ感が魅力的な一着です。本体の質感に合わせてウォッシュ加工を施したボタンや太番のステッチなど、ブランドならではのこだわりが散りばめられています。
アイテム7
『フリークスアメリカ』
生地や資材の調達から縫製に至るまで、MADE IN USAにこだわって作られたブレザー。ざっくりとした質感のサージ生地をボックス型のシルエットに仕立てることで、オーセンティックな雰囲気に仕上がっています。タイドアップしてオンにはもちろん、オフのカジュアルにも使い勝手のよい紺ブレです。
ビジネススタイルからアウトドアまで幅広く執筆
池田 やすゆき
「FINEBOYS」編集部を30歳で独立。以後フリーのファッションエディター&ライターとして「MEN’S EX」「LEON」「GQ」「AERA STYLE MAGAZINE」など各メンズ誌・WEB版のほか、企業広告、オウンドメディアにて執筆。BBQインストラクター、第二種電気工事士など資格多数。目下の目標は危険物取扱者乙種4級取得。